人気記事ランキング
更新日 2026.09.27
投稿日 2026.08.19

「新規事業、やらなきゃとは思ってるんですが……」
こういう話を、経営者や事業責任者の方からよく聞きます。必要だという感覚はある。でも「何から手をつければいいのか」「どんな体制で進めればいいのか」が曖昧なまま、気づけば既存事業の対応に追われている——そんな状態、思い当たりませんか?
新規事業の成功事例を調べると、「●選」形式の記事が並びます。事例の数は多いのですが、読み終わってもどこか「で、自分たちはどうすればいいのか」という問いが宙に浮いてしまいます。理由はシンプルで、事例を「羅列」しているだけだからです。
成功した新規事業には、大きく2つのパターンがあります。既存事業の技術・顧客・インフラを別の文脈で使いこなした「シナジー型」と、これまでとはまったく異なる市場に概念ごと乗り込んだ「異業種参入型」です。どちらのパターンかによって、立ち上げ期の設計も、社内体制の組み方も、ブランドとマーケティングの使い方も変わってきます。
本記事では、国内外12社の事例をこの2軸で整理しながら、成功の構造を読み解いていきます。「どんな体制で動かしたか」「何を外注し、何を社内に残したか」まで踏み込んでいきます。
「成功事例を読んでも動けない」——その理由は、事例の読み方にある

新規事業の成功率は約10%——それでも事例から学べることはある
新規事業が難しいことは、多くの経営者が肌で知っているはずです。一般的に、新規事業の成功率は10〜20%程度とされており、経済産業省の調査でも、事業化から3年以内に撤退・縮小するケースが過半数を占めると報告されています(※1)。
ただ、この数字をもって「新規事業はリスクが高い」と結論づけるのは早計です。成功している企業は確かに存在しますし、失敗した事業から学んで次を軌道に乗せた企業も少なくありません。問題は「なぜ成功したか」の構造を読み解けているかどうかです。
事例を集めても動けないのは、個別企業のストーリーをそのまま自社に当てはめようとするからです。Amazonだから、ソニーだから成功した——そう感じて読み飛ばしてしまうと、そこにある普遍的な「勝ち筋」を見逃してしまいます。
事例は「シナジー型」と「異業種参入型」に分けると見えてくるものが変わる

成功した新規事業を俯瞰すると、大きく2つのパターンに分類できます。
ひとつは「シナジー型」。既存事業で蓄積した技術・顧客基盤・インフラを、別の文脈に転用して新たな価値を生み出すパターンです。富士フイルムが写真フィルムの技術を化粧品に活かしたように、既存のアセットが新事業の核になります。
もうひとつは「異業種参入型」。既存の事業領域とは切り離し、まったく新しい市場や概念を持ち込むパターンです。ソニーが家電メーカーからエンタメ企業に変容したように、「自分たちが何者か」を問い直すところから始まります。
この2つは、立ち上げの設計も体制の組み方も、ブランドとマーケティングの使い方も根本的に異なります。どちらが正解かではなく、「自社がどちらのパターンで動けるか」を先に見極めることが、成功への最短経路になるのではないでしょうか。
【シナジー型】既存の資産・技術・顧客を別の文脈で使いこなした事例6選

富士フイルム——フィルム技術をそのまま化粧品・医薬品へ
デジタルカメラの普及により、写真フィルムの需要は2000年代に入って急速に失われていきました。富士フイルムの主力事業が消えていく中で、同社が選んだのは撤退ではなく「転用」でした。
写真フィルムの製造には、コラーゲン、酸化防止技術、ナノ技術など、スキンケアに応用できる技術が多数蓄積されていました。富士フイルムはこの技術資産をそのまま化粧品ブランド「アスタリフト」(2007年発売)に転用し、さらに医薬品・サプリメント事業へも展開しています。現在ではヘルスケア領域が同社の主要収益事業のひとつとなっています(※2)。
成功の核心は「技術の再解釈」にあります。フィルム製造のノウハウを「スキンケアに使えるはず」と概念を組み替えた瞬間、新規事業の出発点が生まれました。技術は変わっていません。見ている市場が変わっただけです。
既存事業が縮小していくとき、人は「何か新しいことを」と焦りがちです。でも富士フイルムの事例が示すのは逆で、すでに持っているものを「どこに持っていくか」という問い方の方が、強い事業になりやすい。
Amazon——自社インフラの外販がAWSになった
AmazonがクラウドサービスAWS(Amazon Web Services)の提供を開始したのは2006年のことです。きっかけは、自社のeコマースを支えるために構築していたサーバーインフラを、他の企業にも使ってもらえないかという社内の議論でした(※3)。
2023年時点で、AWSはAmazon全体の営業利益の約60%を占めるまでに成長しています。EC事業のインフラとして内部に抱えていたものが、世界最大のクラウドプラットフォームになったわけです。
この事例が示すのは「自社の課題を解いた仕組みが、他社の課題も解ける」という発想の転換です。社内で当たり前に使っているものを「外に出せるか」という視点を持つだけで、新規事業のアイデアは変わります。
キリン——ビール研究の副産物が「プラズマ乳酸菌」事業へ
キリンが「プラズマ乳酸菌」の機能を発見したのは、ビール製造における乳酸菌研究がきっかけでした。免疫機能の維持に関わるとされるこの成分を機能性表示食品に応用し、2019年に「iMUSE」ブランドとして商品化。飲料・ヨーグルト・サプリメントへと展開し、ヘルスサイエンス事業の柱に育てています(※4)。
注目すべきは、この事業が国内ビール市場の縮小期と重なっている点です。キリンはビール研究から生まれた副産物を「次の柱」として設計しました。技術資産の中に眠る可能性を、経営判断として意図的に掘り起こした事例と言えます。
メルカリ——フリマの決済インフラをそのままメルペイへ
メルカリが「メルペイ」をリリースしたのは2019年です。フリマアプリの売上金を、そのままコード決済・電子マネーとして使えるようにしたサービスです(※5)。
既存ユーザーの「売上金をもっと使いやすくしたい」というニーズに応える形で始まりましたが、背景にあるのは「数千万人規模のユーザーと、蓄積された決済インフラ」というアセットです。ゼロから金融サービスを立ち上げるのではなく、フリマで既に動いていた「お金の流れ」をそのまま社会インフラへと接続しました。
金融業への新規参入は規制も多く参入障壁が高いですが、それでもメルカリが比較的スピーディーに展開できたのは、ユーザー基盤と信頼という、最も獲得が難しい資産を最初から持っていたからです。
トヨタ——「車を売る」から「移動体験を売る」へ変えたKINTO
トヨタが2019年に設立したKINTOは、月額定額で車に乗れるサブスクリプションサービスです(※6)。税金・保険・メンテナンスをすべて含んで提供し、「所有」ではなく「利用」という体験を売るモデルへ転換しました。
車は売れば終わりではなく、乗り続けてもらうことで関係が続く。KINTOを通じてトヨタは顧客との接点を購入後も持ち続けられるようになりました。製造業がサービス業の論理を取り入れた典型例であり、「売り切りモデルからの脱却」という文脈で多くの産業に示唆を与えています。
シナジー型に共通する構造——転用が成立するための3つの条件
5つの事例を並べると、シナジー型の新規事業が成立するための共通構造が見えてきます。
① 技術・資産が「他の文脈でも使える」という再解釈があること 富士フイルムもキリンも、既存の技術に「別の名前をつけ直した」ことで新市場への扉が開きました。持っているものが変わったのではなく、「何に使うか」という問いが変わっただけです。
② 既存の顧客・インフラが新事業の参入障壁になること メルカリのユーザー基盤、AmazonのITインフラ、トヨタの販売網——これらは外部からは真似できない資産です。新規事業の差別化はここから始まります。
③ 「転用」の判断を経営者が主語で行っていること 偶然の発見をそのままにせず、事業として設計し直す意思決定が必ずあります。技術や資産があっても、それを使う判断がなければ事業は生まれません。
自社のどんな技術や顧客基盤が、別の産業で価値を持てるか——シナジー型を考えるとき、まずここから問い直すことが出発点になります。
6例目として触れておきたいのがPayPayです。ソフトバンクとヤフーが持っていた膨大なユーザー基盤・決済データを活用し、2018年のサービス開始からわずか数年で国内シェアトップクラスに成長しました(※7)。顧客基盤という「既存資産の転用」がいかに強力かを示す、国内でも特に規模感のある事例です。
【異業種参入型】既存の文脈を捨て、概念ごと新市場に乗り込んだ事例6選

ソニー——ハードウェア企業がエンタメ帝国を築いた理由
ソニーを「家電メーカー」だと思っている方は、今の同社の財務を見ると驚くかもしれません。2023年度のソニーグループの営業利益を見ると、PlayStation事業と音楽・映画を中心とするエンタテインメント事業が利益の大半を占めており、テレビや家電の存在感は相対的に小さくなっています(※8)。
転換点は1988年のCBSレコード買収、1989年のコロンビア・ピクチャーズ買収です。ハードウェア技術者の集団だった会社が「ハードとソフトを一体で提供する」という概念を持ち込み、エンタメという全く異なる産業に入りました。当時この買収は「場違い」と批判も受けましたが、今から見れば先見の明があったと言えます。
CBSレコードを母体に生まれたSony Music Entertainmentは、現在ではコロンビア・レコードを傘下に持ち、Adele、Beyoncé、Bob Dylan、Bruce Springsteen、Mariah Carey、BTS、Harry Stylesといった世界的アーティストのレーベルを運営しています(※8)。国内でもYOASOBIがソニーミュージック傘下のレーベルから世界市場へ展開しています。家電の設計図からは到底想像できなかった「音楽産業の巨人」という姿が、買収という意思決定ひとつから生まれました。
ソニーが示すのは「自社の定義を変えた企業は、市場の定義まで変えられる」という事実です。
DeNA——ゲームの基盤を医療・ヘルスケアへ転換
DeNAは、モバイルゲームで培ったデータ分析能力・エンジニアリング基盤を、まったく文脈の異なる医療・ヘルスケアへと持ち込みました。子会社DeNA Life Scienceが展開する遺伝子検査サービス「MYCODE」(2014年)は、ゲームで蓄積したパーソナライズ技術とデータ活用の発想を医療に応用した試みです(※9)。
また、プロ野球・横浜DeNAベイスターズの買収(2011年)も異業種参入の一例です。球団経営をデータドリブンに改革し、ファンコミュニティの形成・スタジアム集客・グッズECを連動させることで、スポーツビジネスの文脈を塗り替えました。ゲーム会社がなぜ医療やスポーツに?と思う方もいるかもしれませんが、DeNAにとってはいずれも「テクノロジーとデータで体験を最適化する」という得意技の応用です。
DeNAがスポーツや医療に入れたのは、「テクノロジーとデータ」という自分たちの強みを産業ごとに再定義できたからだと思います。「何をやるか」より「何が得意か」を先に問うた結果だった。
スノーピーク——用品メーカーから「人間性の回復」という概念ブランドへ
スノーピークは、アウトドア用品の「メーカー」として語られることが多いですが、同社が本当に売っているのは「モノ」ではありません。自然の中で過ごすことで人間性を取り戻すという体験——そのコンセプトこそが事業の核にあります。
この思想が事業の多角化を支えました。キャンプ場の開発・運営、アパレルブランド、さらには都市部でのキャンプスペースや飲食事業まで展開し、「アウトドア用品メーカー」という定義を脱しています(※10)。
注目すべきはコアユーザーの熱量です。ブランドへのロイヤリティが他のアウトドアブランドと比較して顕著に高く、これはプロダクトへの満足ではなく「このブランドが体現する価値観が好き」という共感によるものです。ブランドが事業多角化を支える骨格になっている、希少な国内事例と言えます。
任天堂——ゲームIPをリアル空間で体験させる(USJ協業)
任天堂が2017年にユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)との協業を発表し、2021年に「スーパー・ニンテンドー・ワールド」がオープンしました(※11)。マリオやゼルダというゲームIPが、現実の空間で「体験できる世界」になりました。
任天堂は長らく「スクリーンの中のエンターテインメント」を提供する会社でした。それをリアル空間へと拡張したこの取り組みは、IPの「場所を選ばない資産性」を示す事例として国際的にも注目されています。ゲーム一本のセールス数ではなく、IP自体の価値を育て続けることが長期的な事業強度につながる——この判断を任天堂は一貫して持ち続けています。
ホンダ——二輪・四輪メーカーが5年連続世界首位の小型ジェットを作った
ホンダが「HondaJet」の商業販売を開始したのは2015年のことです。以来、小型ビジネスジェット機の納入機数において同クラス世界首位を記録し続けています(※12)。
自動車メーカーが航空機を作るというのは一見「異業種参入」に見えます。しかしホンダにとっては、内燃機関・流体力学・精密加工という技術の延長線上にありました。1986年から約30年かけて開発を続け、エンジンを機体の上部に配置するという革新的な設計で航空業界に参入しました。「異業種」に見えても技術の本質を見ればシナジー型の側面も持つ——HondaJetはその境界線を曖昧にする事例でもあります。
異業種参入型に共通する構造——「自分たちが何者か」を問い直す力

5つの事例に共通するのは、事業の成功以前に「自社の定義を書き換えた」という経営判断です。
ソニーは「ハードウェアメーカー」という定義を捨て「体験を届ける会社」へ。スノーピークは「アウトドア用品メーカー」から「人間性の回復を追う会社」へ。DeNAは「ゲーム会社」から「データとテクノロジーで産業を変える会社」へ。自己定義が変わった結果として、事業の幅が広がっています。
異業種参入型が失敗する多くのケースは、「新しい市場に入ること」を目的にしているパターンです。逆に成功しているケースは、自分たちの強みや存在意義を突き詰めた結果、気づいたら別の産業にいた——という順番になっています。
異業種参入型で失敗する企業に共通するのは、「新しい市場に入ること」を目的にしているケースです。成功している会社は逆で、自分たちの強みや存在意義を突き詰めた結果、気づいたら別の産業にいた——という順番になっています。
6例目として、パナソニックを挙げておきます。家電メーカーとして出発したパナソニックは、現在では住宅事業(パナソニックホームズ)、車載電池・エネルギーマネジメント事業を主要ピラーとして持っています。かつての「家電ナショナル」というブランドから「くらしとビジネスのソリューションカンパニー」へと自己定義を書き換えたことが、複数の事業柱を育てる土台になりました(※13)。
成功した新規事業の「社内体制」——何を内製し、何を外注したか

大企業が採る「社内スタートアップ型」切り出しと、その成功条件
成功した新規事業の体制を見ると、大企業ほど「既存組織から切り離す」動きをとっていることがわかります。
キリンのiMUSEはヘルスサイエンス事業部として独立した組織で運営されています。メルペイはメルカリの完全子会社として設立されました。KINTOはトヨタファイナンシャルサービスの傘下に設けられた独立法人です。
なぜ切り離すのか。理由はシンプルで、既存事業の論理(KPI・承認フロー・文化)の中では、新規事業は育ちにくいからです。経済産業省の「イノベーション100委員会」がまとめた提言(2020年)でも、新規事業推進に成功している企業の特徴として「経営直轄の専門組織の設置」と「既存事業との評価軸の分離」が挙げられています(※14)。
成功条件は大きく3つ。経営者が「自分ごと」として関与すること、既存事業の評価指標を持ち込まないこと、そして撤退基準を最初に決めておくことです。この3点が揃わないまま動き出した新規事業は、既存事業の「お荷物」として扱われ、権限も予算も削られていきます。
スモールチーム×権限委譲——意思決定スピードが勝敗を分ける
新規事業で重要なのは、スタート時の「チームの小ささ」です。
Amazonの社内では「ピザ2枚ルール」と呼ばれる考え方があります。チームの人数は「ピザ2枚で食べられる人数」、つまり6〜8人が上限だという経験則です(※15)。人数が増えるほど意思決定が遅くなり、検証サイクルが鈍る。シンプルですが、実践できている企業は多くありません。
日本企業では新規事業チームに多くの人員を当てる傾向がありますが、立ち上げ期に必要なのは頭数ではなく、意思決定の速さとそれを可能にする権限委譲です。「上に確認が必要」という構造が残る限り、新規事業のスピードは落ちます。
何を外注すべきか、という問いへの答えはシンプルです。スピードが出しにくい専門領域(デザイン・エンジニアリング・マーケティング実行)は外注し、顧客との接点・仮説の立案・ブランドの核は内製する。外に出してはいけないのは「自分たちが何者で、誰に何を届けたいか」という問いです。それを外部に委ねた新規事業は、いつかブランドとして機能しなくなります。
ブランドとマーケティングの設計は「誰が持つか」で変わる
新規事業の失敗パターンで見落とされやすいのが、「ブランドとマーケティングを後回しにする」という判断です。
プロダクトが出来てから名前を考え、サイトを作り、広告を打つ——という順番で動くと、出てくるのは「何をやっている会社かわからない」という状態です。広告を出せば集客できる。でも止めた瞬間に新規が止まる。サイトに来ても「よくわからない会社」として離脱される——この構造の根本にあるのは、「なぜ自社を選ぶのか」という理由が積み上がっていないことです。
ブランドを「誰が持つか」という問いも重要です。外部のデザイン会社や外注先と組むこと自体は問題ありません。ただし「何のための会社か」という問いの答えを、社内の誰かが主語を持って持ち続けていなければ、ブランドはデザインの問題に矮小化されてしまいます。
新規事業のブランド設計を「後でやる」と言い続けると、結局ずっとやらないことになります。立ち上げ直後の混乱期に「誰のための事業か」だけを言語化しておくことが、半年後・1年後の迷走を防ぐ最も安いコストです。
新規事業を立ち上げるとき、最初に設計すべきこと

アイデアより先に「誰のための事業か」を言語化する
新規事業の多くは、「面白そうなアイデア」や「市場の伸びしろ」から始まります。それ自体は間違いではありません。ただ、そこから最初に問うべきは「誰のどんな課題を、なぜ自分たちが解くのか」という問いです。
この問いに答えられない段階でプロダクト開発に入ると、後から「誰に売ればいいかわからない」という状態に陥ります。ターゲットが曖昧なまま広告を打っても、コンテンツを作っても、効率は上がりません。
シナジー型であれ異業種参入型であれ、成功した事業はすべて「顧客の解像度」が高いです。富士フイルムは「スキンケアに真剣に向き合う女性」を起点にアスタリフトを設計しました。スノーピークは「本物志向の自然体験者」という像を起点にプロダクトとコミュニティを設計しました。アイデアより先に、顧客像が言語化されていたのです。
新規事業こそブランド設計を最初期に——後から直すコストを知っているか

新規事業を立ち上げるとき、ブランド設計を「軌道に乗ってから」と先送りにする判断は、一見合理的に見えます。しかし現実には、ブランドが後回しになった事業ほど後からの修正コストが大きくなります。
出てしまったコンテンツ、営業資料、採用ページ、WebサイトのURL——これらを統一されたブランドメッセージで作り直すのは、最初から設計するよりも数倍の時間と費用がかかります。そして「名前は知っているけど何をしているかわからない」という認知のノイズを消すのは、最も難しい作業のひとつです。
新規事業の立ち上げフェーズにブランド設計を組み込むことは、コストではなく投資です。コンセプトと顧客像が固まったタイミングで、たった数週間をブランドの核の言語化に使うことが、後の軌道修正コストを大幅に削減します。
この設計をどう進めるかについては、【内部リンク:ブランド戦略の記事】で詳しく解説しています。新規事業の立ち上げと並走させるかたちで、あわせて参照してみてください。
まとめ
本記事で取り上げた12の事例を振り返ると、成功した新規事業には「シナジー型」か「異業種参入型」かを問わず、共通する要素があります。
顧客起点の設計、既存アセットの戦略的活用または自己定義の書き換え、スモールチームと権限委譲による意思決定スピード、そしてブランドとマーケティングを「事業の核」として最初期に設計すること——これらが揃ったとき、新規事業は単なる試みを超え、事業の柱へと育っていきます。
新規事業は「何をやるか」では決まりません。「誰が、何のために、どんな体制で動かすか」という問いへの答えを持っている組織が、最終的に勝てる事業をつくれます。
参照・引用
※1 経済産業省「新規事業創造に関する実態調査」https://www.meti.go.jp/
※2 富士フイルムホールディングス株式会社「統合報告書2023」https://ir.fujifilm.com/
※3 Amazon.com, Inc. Annual Report 2022 https://ir.aboutamazon.com/
※4 キリンホールディングス株式会社「統合報告書2023」https://www.kirinholdings.com/jp/investors/
※5 株式会社メルカリ「有価証券報告書 2023年6月期」https://ir.mercari.com/
※6 KINTO株式会社 公式プレスリリース https://www.kinto-jp.com/
※7 PayPay株式会社 公式サービス情報 https://paypay.ne.jp/
※8 ソニーグループ株式会社「アニュアルレポート2023」/ Columbia Records https://www.sony.com/ja/SonyInfo/IR/
※9 株式会社DeNA 公式プレスリリース・MYCODE事業概要 https://dena.com/jp/
※10 株式会社スノーピーク「有価証券報告書 2022年12月期」https://ir.snowpeak.co.jp/
※11 任天堂株式会社・ユニバーサル・スタジオ・ジャパン 公式プレスリリース(2017年・2021年)https://www.nintendo.co.jp/
※12 General Aviation Manufacturers Association (GAMA)「2023 General Aviation Statistical Databook & Industry Outlook」https://gama.aero/
※13 パナソニックホールディングス株式会社「統合報告書2023」https://holdings.panasonic/jp/corporate/ir/
※14 経済産業省「イノベーション100委員会 提言書」(2020年)https://www.meti.go.jp/
※15 Brad Stone “The Everything Store: Jeff Bezos and the Age of Amazon” (2013) Little, Brown and Company

採用情報
ブランドとマーケティングの二項対立を超えて、両方を高い次元で追い求めるには、既存の知見に安住せず、常に最善を問い続ける必要があります。つくるだけでも、売るだけでもない。美しさと論理のどちらも妥協しません。ブランドと成長の両方に向き合う仕事を、一緒にやりませんか?代表からすぐにご連絡を差し上げます。
採用情報を見る 採用情報を見る







